原文:http://www.starcitygames.com/magic/legacy/18517_Feature_Article_Would_Legacy_Be_Better_Off_Without_Tarmogoyf.html


《タルモゴイフ/Tarmogoyf》は12月の禁止・制限リストの更新を切り抜けました。
この辺りでレガシーにおける彼の歴史を振り返ってみましょう。

悪名高い低コストのファッティは2007年のデビューから着実に影響を及ぼしてきました。
彼は環境を歪めているのでしょうか?
そんなことはありません!彼は環境を特徴づけているのです。
ヴィンテージプレイヤーがMoxenを有効活用するか黙らせるかする様に、レガシープレイヤーは《タルモ》を同じ様に敵対視し、愛するのです。
全ての色にタッチされて使われてる?それが何故いけないんでしょうか。
1Gのコストで何の欠点も無い5/6クリーチャーをゲームが始まってすぐに使えるんですよ?

その強力さと色マナの少なさから彼の価格は現在も上昇し続け、現在60$の値札がついています。

《タルモ》の圧倒的な強さを考えるとこの値段がレガシー入門者に対する弊害であるとは言いづらいのですが、一部の人は彼を環境を歪めているので禁止にしろと騒ぎたてます。


彼の弁護人は下記の2点を主張するでしょう。

・《タルモ》はトランプル・回避能力・その他能力をまったく持たない、いわゆる”バニラ”である。
・《タルモ》は簡単に対処できる。(白い除去・黒い除去・自分の《タルモ》によって、という注釈つき)

主張をより強固にするために、思考実験で《タルモ》を少し強くしてみましょう。
《タルモ》のパワー/タフネスが"* x 2/* x 2"だったとします。
上記の主張は変わらず有効じゃありませんか?


さらに弁護人からの質問です。
《タルモ》を禁止する事にどのようなメリットがあるのでしょうか?
過去の禁止カードの禁止理由は環境を正常に保つ事にあると結論付けられます。
R&Dのマネージャー 、Aaron Forsytheは2004年の《頭蓋骨絞め/Skullclamp》がスタンダードで禁止される際、以下のように発表しました。


《頭蓋骨絞め》がスタンダードで禁止されるのは、簡単に言うと、ありとあらゆるところで使われるからだ。
競争力を持ったデッキの全てが《絞め》をメインに4枚かサイドに4枚、あるいは《絞め》を対策するために構築されている。
そして結果を残したのは、前2つが3つ目を圧倒した。
デッキに《絞め》を使うか《絞め》への対抗カードを使わなくてはならない環境、これはカードがメタゲームを歪める決定的な例だ。



この文章の鍵は、環境の安定、多様性の重要性、多様性の欠如の問題視にあります。

これを基準にすると、《タルモ》がかつてのスタンダードにおける《絞め》程に悪い影響を与えているとは言えません。
彼は競争力のあるデッキの多くに入っていますが、その全てに座席を確保している訳ではないのです。
St. Louisで行われたStarCityGamesの5000$オープンを見てみましょう。
優勝者のデッキには4枚、Top4には2つのデッキに計8枚、Top16では合計32枚です。

10月のPhilladellphiaの5000$オープンは同じようにTop16で合計32枚の《タルモ》、Top4には計8枚ですが優勝はスレッショルドに勝ったスタックスに持っていかれました。

上位の50%が《タルモ》を使っていますがこれは支配的な数字でしょうか?
これが60%だったら?
70%は?
どこからが禁止ライン?
そもそも禁止ラインなんてありますか?
Forsytheの理論によるならば、大きなトーナメントで勝つために全てのプレイヤーが《タルモ》を4枚使い、そして勝つ事によって《タルモ》を禁止リストに追い込むことができるでしょう。

The Sourceの「レガシーで禁止した方がいいカード」スレッドで、《タルモ》は《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》に次ぐ2位につけています。(スレッドが禁止リストに影響を及ぼすことはありません。)
《独楽》は2008年のエクステンデッドで、シャッフル手段と組み合わされることによりあまりに多くのラウンドを引き分けに終わらせ、トーナメントを長引かせたという理由で禁止になりました。
禁止に関する議論において、Bill Stark は彼のコラム"Behind the September 2008 B&R Changes"で、黎明期に《Shahrazad》、《土地税/Land Tax》、《Thawing Glaciers》が似たような理由で禁止になったと指摘しました。

《タルモ》はゲームの進行を遅らせたりはしないので、この点でも陪審員に好印象です。
次に2003年まで振り返ってみましょう。

2003年に《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》がエクステンデットで禁止されました。
DCIの説明は以下の通り。


エクテンマジ早くなりすぎ。
悪いデッキが多いけど一番悪いのはゴブリンデッキ、んで、その中でもパねぇのが《従僕》。
オンスロートブロック、特にスカージでイケてるゴブリン出しすぎて、そいつらをタダで出せちゃうのが1ターン目に出てくるのは強過ぎだぜプゲラッチョ。



もちろん、ANTが2キルしてくるレガシーで、それよりも遅い《タルモ》の禁止なんてあり得ません。
ただのクリーチャーに過ぎないという点は被告にとって最も強力な主張でしょう。
そもそもクリーチャーは(戦闘に使う)双方向的なものです。
そしてWotC(ともちろんプレイヤー)は双方向性を好んでいます。
《世界喰らいのドラゴン/Worldgorger Dragon》と《隠遁ドルイド/Hermit Druid》はコンボパーツなので禁止リストに載っています。
《金属細工師/Metalworker》は《修繕/Tinker》と一緒に牢屋に入っていましたが最近追い出されて来ました。
《ゴブリン徴募兵/Goblin Recruiter》は《食物連鎖/Food Chain》との組み合わせで恐ろしい事になってしまいます。
《タルモ》はコンボパーツたり得ません。
彼はビートダウンするためだけにいるんです。
彼はきちんと仕事をします。過剰と言ってもいい位に。


そのサイズに比べて低すぎるマナコストのため、《タルモ》はデッキ構築において選択肢を減らしてくれます。
大抵の場合、彼は選択肢として最高の回答だからです。
彼はカウンタートップにおけるデッキ内唯一の大きなクリーチャであり、ズーではクリーチャー軍団の頼もしい追加です。
エヴァグリーンは手札破壊で、ゴイフスライは火力、スレッショルドはテンポカードでそれぞれタルモをバックアップします。
アグロロームが相手に土地を投げつける用意が完了しているとしても《タルモ》を4枚使う余地はあるでしょう。

マーフォーク。そう、マーフォークデッキにすらタルモの居場所があるんです。
鰭(ひれ)と鱗がデッキの必要条件だと思うかもしれませんが、一部のプレイヤーはデッキのロードクリーチャーから恩恵を受けられなくても、もう4枚のマーフォークよりも《タルモ》を使う方が効果的であると考えたようです。
そのうちの一人がPhilladellphiaの5000$オープンでTop16に残りました。

《タルモ》について話すとき、彼はR&Dの失敗作であるという点に話が及ぶでしょう。
ところがR&Dは彼の強さを了解済みだったのです。
昨年の夏、MTG Salvationのフォーラムにある「皆がいつも話してる、けれど僕には探せない、誰か知ってる人はいない?」スレッドに端を発したYouTubeのThe Magic Showエピソード79があります。
この動画でMark Rosewaterは《タルモ》はR&Dの、緑を強力な色にする努力の結果だという事を明かしました。(http://www.youtube.com/watch?v=eVNfxf8v3F4 6:00~)
Markによると、この毛深い獣が当初3マナで、ジョニー(新し物好きなプレイヤー)のための「ナイスな《ルアゴイフ/Lhurgoyf》の亜種」を作りたかったそうです。
「我々は《タルモ》が《タルモ》である事を知らなかったんだ。分かるだろう?」彼はニヤニヤしながら頭を振ってこう言ったのです。


しかし、《タルモ》はいつ指名手配されてもおかしくありません。
MtGの構造はバランスを取るようにできています。
コストが安い強力なカードを使うには正当な対価を払わなくてはいけません。
《はぐれ象/Rogue Elephant》はGで3/3ですが、《森/Forest》を1枚生贄に捧げる事を要求されます。
《肉裂き怪物/Flesh Reaver》は1Bで4/4の、ダメージを与えると《目には目を/Eye for an Eye》を発動するクリーチャーです。
彼らは1/1は1マナ、2/2は2マナであるという一般的な形からは逸脱しています。

ウィニー・デッキとファッティ・デッキには明確な線引きがなされていました。
かかったマナとターンに関わらず、ウィニーはラッシュでファッティを蹂躙することもありました。
同様に、ファッティは時間が与えられれば、おちびさんたちを蹴散らす事も出来ました。
コストよりもパワーの高いカードが沢山あって線引きが曖昧になっていた事もありますが、《タルモ》はそれを完全に消し去りました。
《カーノファージ/Carnophage》(アップキープコストのあるBで2/2)が《タルモ》に立ち向かえますか?
《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》(Wで2/2、ただし伝説のクリーチャー)は?
《黒騎士/Black Knight》は?
《野生の雑種犬/Wild Mongrel》は?
《タルモ》はファッティのパワーとウィニーのスピードを持ち合わせています。
彼はあっという間に膨れ上がって《勇丸》をホットドッグよろしく呑み込んでしまいます。
《タルモ》はただゲームを進めるだけで大きくなっていくのです。


ギャザラーデータベースによれば、レガシーで使えるカードは10,604種類に上ります。
《タルモ》に肘鉄を喰らわせられるクリーチャーがどの程度いると言うのでしょう?
緑以外で《タルモ》を食い止められるクリーチャーが何体いますか?
《タルモ》が不可欠なデッキがどれほどで、彼を一番うまく使えているデッキはどれでしょうか?
《タルモ》がいなくなったらどのくらいのデッキが緑を散らすのを止めてしまうのでしょう?


レガシーは《タルモゴイフ》がいなくなった方が良くなるのでしょうか?
次のトーナメントで考えてみてください。彼がいてくれる、という事を。

Jeremy Edwards

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